ジュエリーのプロがなぜクリスチャンバウアーを選ぶのか。
奥泉 清 Okuizumi Kiyoshi
株式会社ユーメックス 代表取締役
略歴
- 1977年アメリカ ニッコージェム&ジュエリーインスティチュートでロストワックスキャスティングの基礎を習得
- 1979年貴金属設備メーカー 株式会社東側研究所 入社 貴金属メーカーに鋳造機器のコンサルティング及びアドバイスを行う。
- 1981年日本で最初の鋳造基礎知識専門書「キャスティングの全技法」~新しいロストワックスジュエリー~執筆
- 1982年アートアンドジュエリーアカデミー「ワールドスミス」初代理事長に就任(宝飾業界のデザイナー・加工職人のプロ養成学校)
- 1985年JETRO(日本貿易振興会)の依頼により、日本代表の鋳造技術アドバイザーとして、タイ国商務省主催のバンコク宝石・宝飾フェアで講演。また、デザインコンテスト審査員にも選ばれる。
- 1993年有限会社ユーメックス 設立
ドイツジュエリー輸入専門商社となる。 - 1998年クリスチャンバウアー取扱開始。
- 2000年株式会社ユーメックスとなり、ドイツジュエリーブランド約10社程を扱う日本でも稀有な、ドイツジュエリーに特化した商社となる。
- 現在クリスチャンバウアー日本総取扱店として、日本全国に正規取扱店40店舗と契約。
「クリスチャンバウアーとの出会いを教えてください」
1996年の日本国際宝飾展のドイツブースにクリスチャンバウアー(以下CB)が初出展しました。
当時は、日本でドイツジュエリーブランドを扱っていたこともあり、ドイツコーナーに出展している幾つかのドイツブランドの輸入元として、サポート業務をしておりました。ドイツのスタッフからCBというドイツを代表する結婚指輪のブランドが出展する、という話を事前に聞いておりました。
出展時にとても興味深く商品を見させてもらいました。
これこそが、ドイツの結婚指輪の真骨頂だ!と久しぶりに感動を超えて感銘を受けました。
しかし、この素晴らしい本物の結婚指輪は、日本では容易に受け入れられないだろう、と直感しました。理由は明快です。
- 1. 販売価格が若い購入者の予算を遥かに超えている。
- 2. 日本製の2倍程の金属を使用しており重い。
- 3. 可愛くて華奢なデザインが殆ど無い。
- 4. 欧米で知名度があっても日本国内では無名で認知がない。
- 5. 数えればその他に山ほど理由がある。
その後の1年間の数回に渡る宝飾展では、多くの仕入れ担当者がブースに展示された商品に興味を持たれたようですが、価格と取引条件を確認するやたちまち難色を示して成約は一件もありませんでした。それでも、ドイツ人担当者は根気よく翌年の1997年秋まで出展し続けました。
一年余の期間、この状況をじっと見ていたので、成約できない幾つかの理由を担当者に説明した後、営業通訳をかってでました。その結果、幾つかの会社が興味を持って頂き、後日の営業訪問する約束が取れました。
これが、CB社との最初のきっかけです。
その後どのような経緯でCBを取り扱うようになったのでしょう?
ドイツ人担当者は、通訳なのにまるで営業担当者のように一生懸命にドイツリングを語る私に何かを感じたようです。
「近いうちに、ドイツのCB社の工場を見にこないか」と最終日に言われたのですが、このリングを日本で販売することの難しさを理解していたので、「機会があればお邪魔します」となま返事でした。
しかし、加工畑からジュエリー業界に入った私には、世界レベル(当時27ヶ国へ輸出)の工場見学は、大きな魅力でした。
1997年秋にドイツに仕入れ出張する事になり、約束通りにアポイントメントをとって会社訪問と工場見学をさせて頂きました。
工場は夢の世界でした。
工場見学後の結論は、私が今まで経験したことの無い異次元の工場設備と世界レベルのリングを創り出す独特なマイスターの雰囲気に圧倒されました。CB社の結婚指輪は、ドイツ南西部のヴェルツハイムの自社工場内で、貴金属の合金から成形、石留め、彫刻等の全てが工場内で行われていたのには驚きを隠せませんでした。
CB社では、減圧低酸素環境での高周波による貴金属合金作業を国家資格であるゴールドマイスターが担当していました。
ジュエリー工場での合金作業は、ガス溶解が一般的です。CB方式では、設備費とランニングコストが高くつくので用いません。
20年以上前にも拘らず、ガス溶接機等は一切存在せず高周波の出力制御による加熱加工が行われていました。
近年に至って、カーボンニュートラルが叫ばれておりますが、当時から加熱加工に酸素ガス等を一切使用せず排出しないのです。
私は勤務していた東測研究所の主要設備で、高周波加熱設備を専門としておりとても驚きました。
CB社の技術力・先進性を目の当たりにしたのですね。
話はオフィスに移ります。
工場見学を終えてオフィスに戻ると、何か張り詰めた雰囲気が漂っていました。社長の他に役員の方に迎えて戴いたのには、恐縮しました。
「奥泉さん、日本の取扱店として日本の販売に協力してもらえますか」
と聞かれて日本のマーケティング分析について矢継ぎ早に様々な質問を浴びせられたのです。
結婚指輪ブランドは、大手が競合になるので大手の卸会社が良いと丁寧にお断りをしましたが、「大手の会社ではクリスチャンバウアーを根付かせることはできない。貴方とならできる。」と押し切られて、大変なミッションを仰せつかりました。
数ある結婚指輪の中で、なぜCBをお勧めするのか?
鋳造のプロが、なぜ結婚指輪には鍛造リングが良いという考えに至ったのでしょう?
私の過去の専門分野は、ロストワックスキャスティングで鋳造製法に関わる業務が私の生業でした。
では何故に鋳造製法に関わってきた私が結婚指輪に鍛造のリング、クリスチャンバウアーを勧めるのか疑問に思う方もおられるでしょう。
それは、結婚指輪の製作において、鋳造製法は’’不向きである”という点です。
何が不向きか?
鋳造製法のリングは、強度がCBリングに比べて大きく劣ります。
反対にファッションリングの場合、CBリングの鍛造製法は不向きです。
リングは、着ける目的や用途によってデザインや強度が大きく変わります。
残念ながら、日本で販売されている結婚指輪の98%は鋳造工法によるものです。
私の向き不向き論に宝飾業界が沈黙するのは、鋳造技術屋として業界の方々と技術の向上に努めてきた現場経験を共有してきたからなのでしょう。
営業目的で鋳造製法を蹴落とすためではありません。鋳造リングは、「必ず曲がるとか変形します。」とは言えません。しかし、金属理論上で衝撃や一定以上の応力に対して金属組織の疲れ限度が低く変形し易いのです。
ダイヤが落ちる、緩んで無くなってしまうのは、石に直接衝撃が加わらない限り、リングの変形による爪の緩みが原因です。
今までの経験から、結婚指輪には鍛造製法が向いている。それもCBの作り方が最善とのお考えですね。
生涯、毎日着け続ける結婚指輪には、鍛造工法が向いていることはお話した通りです。また、鍛造工法でリング作りをしているブランドもいくつかありますが、私はCBの工法が結婚指輪として最も理にかなった作り方をしていると思います。
他社ブランド取扱店では、「CBと同じ鍛造工法で作られたリングで、しかもお安いですよ!」と接客を受けることがあると思います。
その時は、「鍛造工法も色々あるようなので、鍛造のどこが同じでどこが異なりますか?」とだけ聞いて見てください。
最後にコンシェルジュについて教えてください
CBコンシェルジェは、特別な研修と認定試験に合格したセールススタッフのみに与えられる資格です。
CBリングの製造工程や、金属基礎理論と鍛造加工の種別と加工法の違い等、専門的な知識を身につけています。
そしてなにより結婚指輪のプロとして、結婚指輪の大切さをお客様に語れる人材を後世に残すのが私の責務だと思い創設しました。ご来店されたらCBコンシェルジュと素敵な時間を過ごせることと思います。